チューナーレスの賞味期限

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気になっていることがある。

チューナーレステレビという言葉が、いつまで使い続けられるかということだ。

レスの系譜

そもそもチューナーレステレビという言葉は、テレビにはチューナーが内蔵されていて当たり前だと考える人が多数派だからこそ成立する。

タブレットPCのことをキーボードレスPCとは呼ばないし、自転車のことも一輪レス三輪車とは呼ばない。音楽は映像レス・ミュージックビデオではないし、食パンも具材レス・サンドイッチではない。

カフェインレス、シュガーレス、ペーパーレス、ワイヤレス、スタッドレスといったレスの先輩たちも、消費者の要望を満たすレスだから、言葉として生き残っている。

では、当たり前のテレビではない、チューナーをわざわざレスしたテレビに消費者が求めるものとは何なのか。

チューナー内蔵テレビよりも安価だから?

それだけではない筈だ。

NHK受信料の支払い義務があるのか、ないのか。この点を重視する消費者が多いからこそ、チューナーレステレビという名称が広まったのではないだろうか。

チューナーレスの金銭的価値

2023年10月にNHK受信料の値下げが予定されている。

日本放送協会放送受信規約の一部変更について、本日、総務大臣の認可を受け、2023
年10月1日から施行します。

放送受信規約の一部変更(受信料の値下げ)について
https://www.nhk-cs.jp/pid99/osk/000000/000074302.pdf

月額料金は、地上契約は現行(口座・クレジット払い)の1,225円から1,100円に、衛星契約は2,170円から1,950円に変更される予定だ。

NHKを視聴している人々にとっては嬉しい話かも知れないが、NHKを視聴することもなく、テレビを設置しているという理由だけで受信料を支払い続けている人の中には、値下げされようとも納得のいかない人々が含まれているだろう。

もしもチューナーレスで事足りるという人が、テレビを処分してNHKを解約したら、3年で約4〜7万円、10年なら約13万円〜23万円もの受信料負担が必要なくなる計算だ。

その金額に収まるチューナーレス機器の選択肢は多いし、これなら元が取れると考えて買い替えた人々は少なからずいるだろう。

問題は、いつまでチューナーレスが受信契約の対象外であり続けるかということだ。

NHKの受信契約

NHKの公式サイトでは、受信契約について、以下のように説明している。

NHKの放送を受信できるテレビ(チューナー内蔵パソコン、ワンセグ対応端末などを含みます)を設置された方に、結んでいただくものです。この放送受信契約に基づき、放送受信料をお支払いいただきます。

NHK よくある質問集 受信契約とはなにか
https://www.nhk.or.jp/faq-corner/2jushinryou/02/02-02-37.html

チューナー内蔵パソコンも、ワンセグ・フルセグ対応のスマホやカーナビも、NHKの放送を受信できる機器を設置していれば支払い対象ということだ。

スマホもパソコンも、VRヘッドセットもプロジェクターも、もちろんチューナーレステレビもそうだが、チューナーが内蔵されていなければ、受信契約の対象外だ。

ところが、インターネットに接続可能な機器を持っているだけで、受信料の支払対象となるような計画が進められているという話を頻繁に耳にするようになった。

NHKの視聴者が受信料を負担するというのは分かる。

また、テレビを設置することによる受信料支払いについても仕方がない。放送を受信可能なテレビを設置していれば、受信契約を結ぶ義務があると最高裁でも認められているのだから抗いようがないのだ。

平成29年12月6日
受信料裁判 最高裁判決について
受信契約の締結に応じていただけない未契約世帯に対して、契約の締結と受信料の支払いを求めた訴訟で、本日、最高裁判所において、受信料制度は合憲であり、受信契約の締結は法的義務であることを認める判決が出され、司法判断が確定しました。

NHK 受信料裁判 最高裁判決について
https://www.nhk-cs.jp/pid99/osk/000000/000042197.pdf

だが、インターネットに接続可能な機器にまで範囲を広げることは、さすがに認められないだろうと考えていた。不安や不満を煽るために誰かが仕掛けた噂話に過ぎないだろうと。

しかし、そうでもなさそうなのだ。

インターネット経由のテレビ放送

まずは、「放送」とはなにかについて調べることにした。「放送」の受信が契約の条件なら、「放送」の定義を明確にする必要があると考えたのだ。

分かったのは、人の知覚によって認識することができない方式で音や映像を送信すれば、有線・無線にかかわらず「放送」になるということだ。

だとしたら、インターネット経由の同時配信は、完全に当てはまるではないか。

とはいえ、2023年5月24日の定例記者会見において、NHKの稲葉延雄会長が以下のように述べたと報じられている。

「ネットに接続できるというだけでスマートフォンやパソコンから受信料をいただくことは、現時点では考えていない」

産経ニュース ネット接続だけでの受信料「考えていない」 NHK会長、必須業務化は前向き
2023/5/24  https://www.sankei.com/article/20230524-AOBA3NUOFVOEPO5LCA3SXORJ5Y/

「現時点では」という前提があるものの、考えていないと発言している。

では、「受信料をいただく」ことを考えるとしたら、いつからなのか。

当然、NHKの「放送」がインターネット上で視聴できるようになってからだろうが、NHKの提供するインターネット配信サービスは既に存在する。

NHKオンデマンドとNHKプラスだ。

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