NHKの公式サイトでは、受信契約について以下のように説明している。
NHKの放送を受信できるテレビ(チューナー内蔵パソコン、ワンセグ対応端末などを含みます)を設置された方に、結んでいただくものです。この放送受信契約に基づき、放送受信料をお支払いいただきます。
NHK よくある質問集 受信契約とはなにか
https://www.nhk.or.jp/faq-corner/2jushinryou/02/02-02-37.html
放送を受信できれば、契約を結び放送受信料を支払う必要があると説明されている。つまり、放送を受信できなければ、契約も放送受信料の支払も必要ないということだ。
では、放送とは、なんなのだろう?
放送の定義
放送法では、「放送」を以下のように定義している。
「放送」とは、公衆によつて直接受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。)の送信(他人の電気通信設備(同条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)を用いて行われるものを含む。)をいう。
放送法 第二条第一号
電気通信事業法で定義されている「電気通信」は以下の通りだ。
電気通信 有線、無線その他の電磁的方式により、符号、音響又は影像を送り、伝え、又は受けることをいう。
電気通信事業法 第二条第一号
要約すれば、大勢の人に向けて音や映像を電磁的に送れば、有線・無線に関係なく「放送」ということだ。
電磁的方式とは、「電子的方式、磁気的方式その他、人の知覚によっては認識することができない」ということらしいので、テレパシーだって規制されるかもと思えてくる。
脳波を使ってメールを送る研究が進められているようだが、公衆に受信される目的で音や映像を脳波で送る場合は、事前に放送局の登録申請をしておいたほうが良いのかもしれない。
つまり、放送法の定義は、解釈次第でいくらでも範囲を広げることが可能だということだ。音や映像を人々に向けて送信し、それを受信すれば放送は成立する。
音?ラジオってどうなんだっけ?
ラジオの受信料
2023年現在、ラジオ放送を受信できるラジオを持っていてもNHK受信料支払いの必要はない。だが、以前は必要だったのだ。以前といっても1968年には廃止されている。
ちなみに、廃止前はラジオのみは50円、ラジオとテレビなら330円が月額受信料だった。ラジオ受信料が廃止され、白黒テレビの受信料が315円に値下げされた代わりに、カラーテレビという分類が新たに加わり、受信料は465円になった。
ラジオ受信料が廃止されたのは1950年のNHK設立から18年後のことだが、実際には1926年に社団法人日本放送協会が設立されて聴取料を受け取るようになってから約40年が経過している。
参考資料:総務省 NHKの概要、受信料体系の現状について(外部リンク)
こうして、ラジオはNHK受信料の対象から外れ、カラーと白黒のテレビが残った。だからといって、NHKラジオやNHK-FMが終了した訳ではない。
白黒テレビ
カラーテレビは急速に普及した。カラーテレビ受信料が開始した1968年の普及率は5.4%だったが、4年後に半数を超え、更に3年後の1975年には9割を超えている。
カラーテレビの普及に伴って、白黒テレビは姿を消していった。白黒テレビ受信料が廃止されたのは2007年。カラーテレビ契約の登場から約40年だ。ただし、カラーテレビ契約に統合されただけなので、白黒テレビならば受信料が不要というわけではなさそうだ。
白黒テレビの国内生産が中止されたのは昭和六十二年でございます。この時点でいわゆる白黒契約、普通契約が百五十万件ございました。それが二十年経過いたしまして、現在は三十二万件残っていると、十八年度末の見込みでございます。 (略)ただ、これは年々数万件ずつ減っていることは事実でございますけれども、先ほど申し上げましたように、もう二十年生産中止されてから経過しているということを踏まえまして、この際、白黒契約につきましてカラー契約に統合させていただくというふうにしたものでございます。
【参議院総務委員会会議録(H19.3.27)NHK理事】
後半の「この際」という箇所が気になった。思い切ってやってみました感が漂っている。
もちろん、白黒テレビという少数派にこだわって、多数派であるカラーテレビ利用者に不利益が生じることは避けるべきだろうが、それをいうなら難視聴の解消目的として行われてきた様々な取り組みも、多数派に生じる不利益を考えれば、「この際」に当てはまるように思える。
「白黒テレビならば受信料は不要だ」そう考えた人達もいるだろうと探してみたら、やはりいた。代用品として監視用モニターやドアホン、医療用マンモグラフィといった案が飛び交っているのが楽しい。
チューナーレスも同じ道を辿るのだろうか。