電気用品安全法とは、電気用品の製造・輸入・販売等の規制、及び安全性の確保のために定められた法律だ。対象品目を取り扱う事業者は、この法律に従わなければならないし、電気用品にPSEマークを表示しなければならない。
守らなければ罰金だけでなく、事業者のPSEマーク表示を禁止して事実上の販売停止としたり、違反品回収が命じられることもある。
その電気用品安全法の「電気用品に使用される絶縁物の使用温度の上限値」において、以下のような記載がある。
ニ 電気用品に使用される絶縁物の「使用温度の上限値」とは、常規使用状態(イ)に
経済産業省
おいて絶縁物に加わる最高温度(ロ)での連続使用(ハ)に許容する温度の上限値とす
る。
注(イ) 常規使用状態とは、“本解釈”に定められた基準周囲温度で行う平常温度上
昇試験の状態とする。
(ロ) 絶縁物に加わる最高温度とは、常規使用状態で、機器の温度上昇が飽和した
時、絶縁物に加わる温度の最高値とする。
(ハ) 連続使用とは、40,000 時間を原則とする。
電気用品安全法
別表第十一 電気用品に使用される絶縁物の使用温度の上限値
第 1 章 電気用品に使用される絶縁物の使用温度の上限値
これは、電気用品に使用される絶縁物について規定したものだ。
電気用品を連続使用して電気絶縁材料の温度が上昇すると、トラッキングによって絶縁性能が低下して発火する可能性があるらしい。トラッキングとは、電気絶縁材料表面に電流が流れ、その表面にトラックと呼ばれる導電性の痕跡が残る現象だ。
つまり、上記の基準を満たした電気用品でなければ、電気用品安全法では安全だと認めないということだ。
電気用品安全法を遵守するには、少なくとも4万時間の連続使用が可能な絶縁物とすべきだと読み取れる。
もしかすると、長寿命が期待できる電気用品であっても、電気用品安全法で謳われている連続使用4万時間を寿命とすることが一般的なのではないか。
そう考え、実際の製品を確認してみることにした。
LED照明については、複数の製造者によって設計寿命が約4万時間として謳われており、上記の予想が当たっている。
もしも、これが他の製品にも当てはまるなら、液晶テレビの寿命も電気用品安全法を理由として約4万時間とすることが可能なのではないか。
だが、その考えは、すぐに打ち砕かれることとなった。
照明よりも連続使用が想定される製品として、24時間換気用の換気扇を調べてみたのだ。
以下のように取扱説明書に明記されており、15年間使い続けると13万時間以上となり、4万時間を大幅に超えてしまう。
設計上の標準使用期間は15年
常時換気(24時間連続換気)のものは、8760時間/年とする。
Panasonic FY-CL08PS9D 取扱説明書 P14 長期使用製品安全表示制度に基づく本体表示について
https://www2.panasonic.biz/ideacontout/2022/11/02/2022110200220128.PDF
何もかも投げ出したくなるのをグッと堪え、確認を続けると、ひとつ気づいた。
24時間連続換気は別にして、換気扇の想定時間として1年間の使用時間が、以下のように記載されているのだ。
換気時間 | |
台所 | 2410時間/年 |
居室 | 2193時間/年 |
トイレ | 2614時間/年 |
浴室 | 1671時間/年 |
https://www2.panasonic.biz/ideacontout/2022/11/02/2022110200220128.PDF
計算してみると、最も換気時間の多いトイレの2614時間/年で15年間使用しても39210時間となり、4万時間に収まっている。
やはり、設計寿命と電気用品安全法には、何らかの関係があるのではないかと考えている。
いや、24時間連続換気のことはなかったことに出来ないかと考えている。