白黒はっきりしないもの

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電気用品安全法について調べていた際、PCモニターに関してPSEマークの表示不備があったことを報告するメーカーが多数見つかった。

これは、電気用品安全法の情報機器に対する認識が不明確であることによるものではないかと考え、関連する情報を調べてみた。

電気用品安全法の対象・非対象の解釈事例

電気用品安全法の対象・非対象の解釈事例は、以下のサイトで参照可能だ。

まず、チューナー内蔵の液晶ディスプレーが対象となる解釈についてだ。「テレビジョン受信機」は、電気用品安全法の対象なので、テレビが受信できるならブラウン管、液晶テレビに関係なく電気用品安全法ということだ。特に違和感はない。

一般テレビジョン放送を受像できるものであることから、「テレビジョン受信機」として取り扱うのが妥当と判断する。

テレビ受信用チューナー内蔵液晶ディスプレーhttps://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/taishou_hitaishou/20031002/tv_tuner_ldc.pdf

次に、「チューナーを有さないモニターとチューナーが一対でテレビジョン受信機となるもの」が対象となる理由についてだ。

「HDMI端子を有するもの」だから対象なのではなく、一対で「テレビジョン受信機」となるので対象としていると読み取れる。そもそもテレビを受信するための仕組みなら「テレビジョン受信機」だということだろう。こちらも特に違和感は感じない。

モニターは、特定電気用品以外の電気用品中、電子応用機械器具の「テレビジョン受信機」として取り扱う。チューナーは、特定電気用品以外の電気用品中、電子応用機械器具の「その他の音響機器」として取り扱う。
(理由)
モニターは、テレビジョンチューナー用入力端子(HDMI端子)を有するものであることから、「テレビジョン受信機」として取り扱うことが妥当と判断する。
チューナーは、デジタル映像・音声信号入出力端子を有するものであることから、「その他の音響機器」として取り扱うことが妥当と判断する。

汎用HDMI端子を有したテレビジョンシステムhttps://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/taishou_hitaishou/20080717/HDMI_tansituki_TV_sys.pdf

TVチューナーが内蔵された液晶モニターとパソコンによって構成される、「インスタントテレビ」についても、解釈は同様だ。テレビとして機能するから「テレビジョン受信機」。対象となるかどうかは、チューナーの有無が関係しているのだと分かる。

本製品の液晶モニターは、パソコンと専用ケーブルで接続されていないと動作しないものの、TVチューナーと電源を内蔵しており、パソコンの電源を投入しなくてもテレビとして機能することから、「テレビジョン受信機」として取り扱うことが妥当と判断する。

インスタントテレビ
https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/taishou_hitaishou/20070216/instant_tv.pdf

違和感を感じたのは、監視制御業務のモニターとして使用されるマルチスクリーンモニターが対象となるという説明だ。Video/HDMI 端子があれば、対象に含まれると言っているように思える。VIDEO/HDMI端子があればチューナーの接続も可能なので、「テレビジョン受信機」だとするならば、大半のPCモニターは「テレビジョン受信機」に当たるのではないだろうか。

本製品はチューナー部を有さないものであるが、Video/HDMI端子を有し、一般テレビジョン放送を表示できるよう設計・製作された受像機とみなされ、また空港管制、交通管制、上下水道監視制御、防災等の監視制御業務のモニターとして使用するものであるが、不特定の一般消費者が操作できるように設置されるものである。不特定の一般消費者が操作する場合は、「電気用品の範囲等の解釈について」Ⅰ三9(6)ロの「一般家庭用として販売」に含まれると考えられることから、電安法上のテレビジョン受信機として取り扱うことが妥当と判断する。

マルチスクリーンモニターhttps://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/file/08_subject/16_oam/multi_screen_monitor3.pdf

更に混乱したのは、家庭用TVモニター付き情報端末に関する解釈だ。集合住宅用ホームセキュリティーシステムの一部となる製品で、ホームサーバーを通じて地上波TV放送の受信が可能なようだ。

これまでの例を考えれば、地上波TV放送の受信が可能である時点で対象となりそうなものだが、対象外とされている。理由は以下の通りだ。

本家庭用TVモニター付き情報端末は、インターホン子機の機能及び地上波TV放送受信機能を有するが、ホームサーバーと一体で使用されるものであり、当該情報端末単体では機能せず、「インターホン」及び「テレビ受信機」のいずれにも該当しないと判断する。

家庭用TVモニター付き情報端末https://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/kaishaku/taishou_hitaishou/20050610/kateiyou_TVmonitor_tsuki_jouhoutanmatsu.pdf

単体でTV放送受信ができないことが理由なら、Video/HDMI端子の有無は、電気用品安全法の対象となる理由にはならないはずだ。

また、情報機器自体は電気用品安全法の対象外とされている件については、以下の調査ログに記したが、Video/HDMI端子の有無が関係するならば、PCモニター自体が電気用品安全法の対象外だとする説も真偽を疑う必要がありそうだ。

表示不備の事例

上記のような認識の違いがPSEマークの表示不備を生み出しているのではないかと考え、表示不備が発生したいくつかの事例を確認してみた。

全てのメーカーがPSEマークの表示不備を報告しているが、必要な試験は通過しており、安全性の問題があったわけではないとしている。

表示する必要がないと判断していたが、後に必要であると判明したということだと思われる。

質問1.何が問題なのか?
回答:電気用品安全法でレノボに課せられた販売時におけるPSEマークの表示義務違反に関する問題です。

質問2.安全なのか?
回答:電気用品安全法に規定されている試験は通過しており、当該製品のご使用に際し品質及び安全性については問題ございません。

質問3.事故は起きていないのか?
回答:当該製品の仕様に伴って発生した事故はございません。

質問4.購入者が当該製品を使用することに法律上の問題はないのか?
回答:電気用品安全法は、電気用品による危険及び障害の発生の防止を目的として、事業者による製造、販売等を規制するもので、販売時において事業者である当社が負うべき義務の問題であり、また購入者やエンドユーザの使用に際し、責を問う法律ではありません。

LenovoThinkVision T1714p モニター PSEマーク記載漏れについて
https://support.lenovo.com/uy/ja/solutions/ht506093

エプソンダイレクトがパソコン用ディスプレイに対して電安法の認識を誤っていたため、対象となる製品において電安法に定められた事業届および技術基準適合確認等の諸手続きを行っておりませんでした。こうした経緯から、基準をクリアした電気製品に表示されるPSEマークを表示しない状態で輸入、販売しておりました。

エプソンダイレクト製パソコン用ディスプレイの不備について
http://www.epsondirect.co.jp/support/information/2021/lcd/

弊社が販売する液晶ディスプレイ製品「VS229HA」及び「VK228H」について、下記のとおり、電気用品安全法に定められたPSEマークの表示漏れがあることが判明いたしました。
本表示漏れへの対応といたしまして、弊社よりお客様に対し、令和4年6月1日以降、正しく表示されたPSEマークのラベルを無料配布させていただくこととなりました。対象製品をお持ちのお客様には、お手数をおかけいたしますが、下記に従い窓口までご連絡をいただきますようお願い申し上げます。(中略)
なお、下記製品に関しては、電気用品安全法上規定されている試験は通過しており、品質、安全性に問題があるものではございません。

ASUS
液晶ディスプレイ製品「VS229HA」及び「VK228H」の機器本体のPSEマークの表記漏れに関するお知らせと対応についてhttps://www.asus.com/jp/news/ktj6pzgoip6hajfv/

PSEマーク表示の例外

PSEマークの表示については、例外もある。以下に記される別表第十二に記されている内容で、国際規格に準拠した基準を利用するならば、PSEの対象外というものだ。

「日本固有の基準」を利用する場合は、別表第一~十一をご確認ください。「国際規格に準拠
した基準」を利用する場合は、別表第十二をご確認ください。ただし、「日本固有の基準」と
「国際規格に準拠した基準」は独立したものであるため、混用することはできません。

経済産業省 よくあるお問い合わせ -中部経済産業局 技術基準適合確認について P6

更に、USB給電のモニターはPSE対象外であるが、そのモニターにバッテリが組み込まれていればPSE対象になるらしい。

安全に関するものなら、いっそ全ての機器をPSE対象にしてしまえばいいじゃないかと思ってしまうが、そうもいかない事情があるようだ。

PSE対象になれば、試験が必要となり製造や輸入する事業者の負担となるし、既に販売済みの製品がPSE対象になった場合、遡って適用されることとなる。例えば、中古品を取り扱っているような業者は、PSEマークがないという理由で販売できなくなってしまうのだ。

電気用品安全法によって、我々の安全が守られているというのは大変ありがたい話だ。

だけど、僕はもうお腹いっぱいで、しばらくはPSEのことを考えたくない気分だ。

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