5年間制限なし
フィリップス社がPCモニターにおいて、驚異的な長期保証を提供していることを先日の調査ログに記した。今回は、フィリップス社に関する調査だ。
フィリップス社とは
フィリップス社は、オランダに本社を構える電気機器メーカーで、ヘルスケア・医療機器を中心に、照明、自動車製品、液晶モニターなどを製造する多国籍企業だ。日本でもシェーバーや電動歯ブラシ製品のメーカーとして消費者に知られるが、CTやMRIといった医療機器の製造もしているようだ。
一見関係のない製品が取り扱われているように思えるが、LEDという観点で取扱商品を確認してみると、繋がりがあるように感じられる。
日本国内におけるフィリップス社製品の主な取扱はBluetooth接続のスマート照明のようだが、海外では電球から業務用照明まで幅広く取り扱われている。それらの光源の大半はLEDだ。
自動車関連のフィリップス社製品の多くはヘッドライトバルブや室内ライトといった照明関係であり、これらにもLEDが使用されている。
調査対象とした液晶モニターにはLEDバックライトが使用されているし、フィリップス社製のCTやMRI、患者情報を管理するシステムといった医療機器の紹介サイトには、装置の一部として使用されている液晶モニターの写真があちこちに登場している。
これら製品を支える技術として、LED関連の占める割合が少なくないであろうことは容易に想像できる。
また、医療機器では、通常よりも高いレベルの品質要求に応えていると考えられる。
医療検査機器に使用されるモニターは、病状変化を見逃すことがないように画面輝度の低下や表示不具合が起きないよう求められるだろうし、患者情報システムのモニターは、患者の安全を守るためにも連続使用に耐えられることが求められるはずだ。
これらの要求に応え続けているのであれば、自社製品の品質に自信を持つことは当然だと言える。だとすれば、他社よりも長期で保証することにも不安はないはずだ。
保証期間の国ごとの違い
上記のようなフィリップス社の品質への自信が、他社にはない長期保証に結びついていることを確認する目的で各国の保証期間を調べてみたところ、意外なことに、大きなバラツキがあると分かった。
下表は、フィリップス社が各国の消費者向けに公開しているモニター保証期間の一覧だ。
確認した限りでは5年保証は日本に限定され、最短である12ヶ月の韓国と最長である日本の60ヶ月とでは、4年もの開きがある。
そこで、どのような理由で日本特有の長期保証が採用されることになったかを調査することにした。
フィリップス社モニター製品の5年保証は日本特有と思われる
日本国内向けの戦略
長期保証の採用経緯に関する情報を追っていくうち、2018年6月頃に複数の媒体に対して実施された、フィリップス社ディスプレイに関するインタビュー記事がみつかった。MMD Singapore日本事務所というフィリップス液晶ディスプレイの日本販売総代理店に対するインタビューだ。
2013年10月に日本市場への参入後、2016年には30万台を販売して液晶ディスプレイのシェア2位(IDC調査)を獲得したとある。記事からは、法人向け販売に力を注いでいるという印象が感じられた。
また、以下の記事では、日本初の5年保証が販売台数のアップを後押ししたとされており、採用した理由については、「参入当初、外資系メーカーは安心感で日系メーカーに追い付いていないと感じたので、長期の保証をつけた」と語られている。「定められた基準よりも厳しい検査基準を独自で設けており、品質には自信がある」とも語られており、品質の裏付けによって5年保証が可能となったことが窺える。
5年保証が日本国内のシェア獲得を目的とした戦略であることは、他国との保証期間の違いや上記の記事からも分かるが、2023年時点においても5年保証は提供されており、2013年から10年間継続していることになる。
もしも無償修理の対応が想定されているよりも多ければ、保証期間や内容に変更が加えられるだろうから、修理発生率は日本総代理店の想定内で推移していると考えられる。
また、他社製品の保証が、期間、機種、使用時間等で制限されていることを考えれば、フィリップス社製モニターの日本国内における保証内容が、2023年時点において業界最高水準であることは間違いない。
本サイトにおいて、液晶ディスプレイやLEDバックライトの設計寿命を考える上でも、フィリップスの保証期間は参考にすべき内容であると考えられる。
フィリップス社製モニターの保証内容は、2023年時点において日本国内の業界最高水準。
保証内容の詳細
フィリップス社製モニターの国内ディストリビュータであるダイワボウ情報システム(DIS)と菱洋エレクトロのサイトに保証内容の詳細が案内されていたので、それらを記録として残しておこうと思う。
以下の内容は、ダイワボウ情報システムが運営するiDATEN(韋駄天)という電子商取引(BtoB)システムに記される内容だ。
全機種5年間保証(サイネージディスプレイを除く)
保証対象 本体(内部部品や電源)・液晶パネル・バックライト・ケーブル
往復送料はフィリップス負担
修理キャンセル料および検査技術料のご負担なし
修理専用箱はサポートセンターにて用意・発送(センター発送時の箱をお持ちでない場合)
iDATEN(韋駄天)
フィリップス販売支援サイト フィリップス液晶ディスプレイはまるっと5年間センドバック保証
https://www.idaten.ne.jp/portal/page/out/mss/philips/warranty.html
同様のサポート内容は、菱洋エレクトロ株式会社のサイトにも記されている。