テレビの買い替えを考えてんだけど、そもそもテレビって何年使えるものなんだ?
平均寿命は8〜10年程度だと言われてるようですけど、実際はそうでもなさそうですよ。
テレビの寿命
一般的に液晶テレビの平均寿命は8〜10年だと言われており、内閣府が2023年3月に公表した消費動向調査(外部リンク)においても、買い替え前のテレビの平均使用年数は10.7年だったという結果が出ています。
ただし、以下の記事で解説した通り、下限が8年であることには修理部品の供給が終了するからだと説明することも可能だが、上限を10年とすることについて明確な根拠はないと考えられます。
古いテレビのままじゃテレビが観られなくなるって聞かされて、今のテレビに買い替えたんだ。何年前だったかな。
だとしたら12年以上前ですよ。その頃、地デジ切替の影響で随分テレビが売れましたから。
日本のテレビ需要は地デジに移行された2011年7月に向けて急上昇しました。以下のグラフは、民生用電子機器国内出荷統計(外部リンク)で提供されているテレビの国内出荷実績数を集計したものです。
12年以上前ってことは、うちのテレビはとっくに寿命を越えてるってことか。
使い方や環境によって使用できる年数は変わりますので、なんとも言えません。
点けっぱなしで使用したり、暑い部屋やホコリや湿気の多い場所で使えば寿命も短いでしょうし。
地デジ切替のときに、テレビを買い替えた他の連中はどうしてんだ?
買い替え時期を過ぎてるんだろ?
ここ数年で、テレビの需要が爆発的に増えた様子は見られないので、買い替えは進んでいないようです。
あれか?みんなスマホを使うようになったから、テレビはもう買わないってことか?
テレビ放送を観る時間が減ったことは確かなようですけど、どうもそれだけじゃなさそうなんです。
リサイクル台数
下のグラフは、環境省が発表している家電リサイクル実績数(外部リンク)を集計したものです。2001年に家電リサイクル法が施行されてから、家電リサイクルによって処分されたテレビ台数を示しています。
出荷のピークであった2010年に処分台数もピークを迎え、平均寿命と言われている10年以上経過した2021年になっても処分台数の急増は確認できません。
ん?
テレビは粗大ゴミとして捨てられなくなったんだよな。
はい。買い替えないにしても壊れたテレビは処分されるはずなんですけど、リサイクル実績が増えてないんです。
テレビは買ったけど、古いテレビの処分はしてないってことか?
そうなんです。で、その数がもの凄いんですよ。
消えた?7000万台のテレビ
以下のグラフはテレビの出荷実績数からリサイクル実績数を差し引いた台数の累計を示しています。
毎年、出荷台数が処分台数を上回っており、2002年から2021年までの差分累計は7357万台に上ります。
この20年間で、テレビは購入したけれど、処分されなかった古いテレビが7000万台を超えてるってことです。
7000万台!
どういうことだよ。不法投棄されてるってのか?
いえいえ。もしも不法投棄なら、街中に壊れたテレビが転がっていそうなものじゃないですか。7000万台ですよ?
環境省が発表している不法投棄回収数(外部リンク)を元にして、2002年から2021年まで集計してみたところ、全国で回収されたテレビ台数は121万台以上もあることが分かりました。決して少ない台数ではありませんが、2002年から2021年までの家電リサイクルによって処分されたテレビは9582万台ですので、大半は正しく処分されていると言えます。
また、テレビ購入時に処分されなかった7357万台という数値には遠く及びません。もしも、回収済みの121万台に加えて、未回収の不法投棄テレビが7200万台もあるならば、社会問題として大きく取り上げられているはずです。
誰かが安く買い取ってんじゃねぇか?
壊れたテレビなんて買い取っても、メリットがないじゃないですか。売る相手もいないし、処分しようにも家電リサイクル費用が掛かかりますから。
壊れたまま家に放置してんじゃねぇか?
壊れたテレビを放置できるぐらい広い家に住んでる家が、日本に7000万軒もあると思います?
だったら、どこに行っちまったんだよ7000万台のテレビは。
どこにも行ってませんよ
不法投棄もされてない。壊れたテレビを誰かが買い取ってくれるわけでも、家に放置してるわけでもない。答えはなんだ。もったいぶらずに教えろよ。
きっと、今も使用されているんですよ。
12年以上経ってんのに、ほとんどのテレビが壊れてないっていうのか?
液晶テレビの寿命
液晶パネルは裏側からバックライトを照射して映像を表示しており、このバックライトの寿命が一般的には6万時間だと言われています。
ですが、これは2011年頃まで使用されていたCCFLという蛍光管のバックライト寿命である可能性が高そうです。また、本サイトでは「LEDバックライトの寿命は3万時間〜4万8400時間」としています。これらの根拠については、以下の記事で解説しています。
仮に、寿命が3万時間だとしても、日本人の平均テレビ視聴時間である3時間12分を毎日観続けた場合は、25年以上使用できる計算となります。
バックライト以外の部品に不具合が生じなければという前提ですし、適切な環境下で使用されなければトラブルが起きる確率は高まりますので、実際に25年以上使用されることは稀なケースかもしれませんが、10年を寿命の上限とすることには疑問が残ります。
液晶テレビの平均寿命が10年よりも長いと考えられる理由は他にもあります。
下表は、消費動向調査(外部リンク)から得た、テレビ買い替えまでの平均使用年数の推移です。
2021年に平均使用年数が10年ということは、出荷実績がピークだった2011年前後に購入されたテレビが調査対象には多く含まれていそうです。
2022年以降、使用年数が年々伸びていることを考えると、2011年前後に出荷されたテレビの平均的な製品寿命を現時点では迎えていないのではないでしょうか。
利用時間の長さによってバックライトが寿命を迎えるのであれば、利用頻度の高いリビングのテレビは寿命を迎えたが、長時間利用しない寝室のテレビには問題が発生していないというケースも有りえます。
2011年前後に出荷されたテレビの多くが、現在も各家庭で利用され続けているのであれば、7000万台のテレビの行方については説明がつきます。
ひとり一台?
テレビを使ってる家がそんなにあるのかよ。
スマホの普及で、若い連中のテレビ離れは進んでるんだろ?
ゲーム機を使用する場合にも使用されますし、YoutubeやNetflixといった動画サービスを表示する機能も、最近のテレビにはありますからね。テレビ放送を観なくても、大画面で視聴する場合は利用されてるんじゃないですか?
2021年の消費動向調査(外部リンク)によれば、1世帯あたりのテレビ保有数(二人以上の世帯)は、約2.07台という結果が得られています。
また、NHKが公表している資料(外部リンク)によれば、2021年時点のテレビ利用世帯は4753万世帯です。
これらを元に計算すると、2021年時点で9838万台のテレビが日本国内で保有されている計算になります。
1億台くらいのテレビが、今も日本中で使われてるってことか?
いいえ、もっとです。1億2千万台くらいにはなると思います。
日本の人口と同じくらいだな
NHKが公表している資料(外部リンク)のテレビ利用世帯の4753万世帯には免除対象世帯・契約対象外世帯が含まれていません。同じ資料に記されている総世帯数に1世帯あたりのテレビ保有数である2.07台のテレビがあるとすると、1億1400万台となります。
更に、NHKが公表している受信料収入の資料(外部リンク)によれば、事業者が533万件あるそうです。NHKが公表している資料に記される2021年度の総契約数4461万件から世帯契約数の3796万件を除いた664万台は、少なくとも存在していると考えられます。
これらから1億2064万台以上のテレビが、2021年時点において国内で保有されていると推測できます。
家電リサイクルで処分されたテレビもあったよな。
じゃ、7000万台の不法投棄の心配もいらないってことか。
はい。使われているテレビと処分されたテレビの数を足すと、出荷されたテレビの台数を大きく上回ります。
2002年から2021年の20年間のテレビ出荷実績は1億6940万台です。
2002年から2021年までの家電リサイクルによって処分されたテレビは9582万台。保有されている1億2064万台の合計は2億1746万台ですので、5000万台近く出荷実績を上回ります。
待てよ、おかしいじゃねぇか。出荷されたテレビよりも処分されたり、使われたりしてるテレビの方が多いなんて。
どうしてだと思いますか?
お前が数え間違えたんだろ。
違いますよ。
家電リサイクル法は、施行された2001年以前に販売されたテレビも対象としています。だから、これまでに処分された大半はブラウン管テレビなんです。
これなら、出荷数と処分台数がかけ離れていても不思議ありませんよね。
以下のグラフは、家電リサイクル実績をブラウン管と液晶・プラズマに分けて示したものです。
2002年から2021年までの累計台数は、ブラウン管の7814万台に対して液晶・プラズマは1768万台で全体の約18%を占める程度です。
処分されてない液晶・プラズマテレビは、どれくらい残ってるんだよ?
液晶・プラズマテレビの総出荷台数からリサイクルされた台数を除くと、およそ1億2000万台です。
日本人の人口と同じぐらいだな。
あれ?さっきも同じこと言わなかったか?
そうなんです。さっきのは「1世帯あたりのテレビ保有数」と「NHKの世帯・事業者契約数」から割り出した値ですが、今回は出荷実績からリサイクル実績を除いた値です。
どちらも同じ1億2000万台ですよ?
1億2000万台のテレビが国内で利用されていると考えて良さそうじゃないですか?
以下のグラフは、国内出荷実績をブラウン管と液晶・プラズマに分けて示したものです。
液晶・プラズマテレビの累計台数は、2002年から2021年までで1億4136万台です。処分済みの1768万台を除くと、1億2368万台が処分されていないこととなります。
この数値は、受信料等から推測した2021年時点の保有台数1億2064万台ともかけ離れていませんので、日本国内で保有されているテレビの台数が、約1億2000万台だという根拠と言えるかと思います。
日本国内で保有されているテレビの台数は、2021年時点で約1億2000万台。
これから起きること
処分されていないテレビの半数近くが10年以上前に販売されたものなんです。
今後、どんなことが起きると思いますか?
テレビの故障が増えるだろうな
それだけじゃありませんよ。テレビの買い換え需要が急増するじゃないですか。
下表は、2002年から2021年の液晶・プラズマテレビの出荷台数とリサイクル実績を累計したものです。2002年から2021年の液晶・プラズマテレビ出荷合計台数は1億4136万台ですが、このうち、2002年から2011年までの10年間に出荷された台数は8971万台で、全体の63%を占めています。
仮にリサイクル処分された1768万台の全てが2002年から2011年に出荷されたテレビだとしても、10〜20年前に製造された7000万台以上のテレビが、現在も使用されていることとなります。
これまでに処分された液晶・プラズマテレビの台数合計は2006年までの出荷台数とほぼ同数です。2007年以降に販売されたテレビの買い換えが控えているのだとすると、出荷台数が急増しても不思議ではありません。特に、地デジへの移行の影響で2009年から2011年に大量出荷されたテレビの大半は買い替えられていない可能性が高い為、集中した時期に需要が急増する可能性が考えられます。
2023年4月時点の民生用電子機器国内出荷統計(外部リンク)を参照してみても、需要の急増は確認されていません。一方で、1億2000万台の半数以上のテレビが故障リスクを抱えたままの状態にあると言えます。消費動向調査(外部リンク)からも、買い替え理由の6割以上を「故障」が占めていることが分かっていますので、遠くない未来に経年劣化による故障が発生する大量のテレビが現れるはずです。
仮に2009年から2011年のテレビが、同様に3年間に集中して買い替えられた場合、年間約2000万台のテレビ需要となります。2013年から2022年までの10年間、年間出荷台数は500万台前後を推移していますので、約4倍の需要増加です。日本向けのテレビが日本国内専用設計であることを考えると、供給不足が発生する可能性は高いと考えられます。
買いたいお客さんが多いのに、品物の不足が続くと、どんなことが起きます?
値段が高くなるって言いたいのか?
でも、テレビが手に入らなくても、別に困んねぇだろ?
スマホやパソコンで色んな動画が観られるんだから。
ですよね?
だけど、大画面で観たくないですか?
ま、大勢で観ることもあるし、映画やスポーツなんかは大画面で観たいかもな。
そこで、チューナーレスですよ。
それなら知ってるぞ。チューナーレステレビっていうんだろ?
いえいえ。チューナーレステレビは、チューナーレスのほんの一部でしかありません。
チューナーレスは、もっと広い範囲の製品が対象なんです。
続きは、執筆が完了し次第、リンクを添付します。
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日本向けのテレビの特徴については、別記事にて解説予定です。執筆が完了し次第、リンクを添付します。