以下の記事で、「6万時間が液晶テレビのバックライト寿命だと一般的に言われているのは、CCFLが使用されていた頃の情報が、LEDに切り替わった後も使われ続けている可能性が高い」という解説をしましたが、今回はその続き、LEDの寿命についてです。
LEDが液晶テレビのバックライトの主流になった2011年頃から、テレビメーカーの公式情報にはバックライトの寿命に関する記載が登場しなくなりました。
とはいえ、LEDに変わったからといって、無限に使用できるようになったわけではないはずです。
そこで、テレビから一旦離れ、LEDバックライトの寿命に関する情報が得られないかを確認してみました。
LED照明の寿命
LEDと聞いて思い浮かぶのは明かり。まずは照明について確認してみました。
その結果、LEDの寿命は光束維持率(新品からどれくらい暗くなったか)で判断され、寿命予測試験に国際規格が存在していることが分かりました。
だとすると、このような試験を経たLED照明ならば寿命を予測できるはずなので、照明器具の寿命を公表している会社もあるはずです。
その情報はあっさりとみつかりました。
アイリスオーヤマ株式会社の公式サイトには、以下のように記載されています。
LED照明の設計寿命は、約40,000時間です。
アイリスオーヤマ エコハイルクス よくある質問
1日10時間点灯させた場合、約10年間お使いいただける想定です。
テレビ製品のサイトで見つけることが出来なかった設計寿命が「約4万時間」だと明記されています。
検証方法については、以下のように記されています。
アイリスオーヤマはLED事業を開始して以来、実使用で40,000時間以上の点灯検証を行っております。 日々研究開発を続けることで、品質の向上に努めています。
アイリスオーヤマ 法人向けLED照明 アフターサービスのご案内
https://www.irisohyama.co.jp/led/houjin/after-sale-service/
加速試験などで予測しているのではなく、実際に4万時間以上点灯させて検証しているようです。
更に、以下のような情報も記されていました。
*5 JIS(日本工業規格)「照明器具 – 第 1 部:安全性追求事項通則 解説」では LED 照明の使用時間を約 30,000 時間(周囲温度 30℃、1日 10 時間点灯した場合)としています。
アイリスオーヤマ 法人向けLED照明 アフターサービスのご案内
https://www.irisohyama.co.jp/led/houjin/after-sale-service/
JISでは約3万時間が寿命だと規定しているが、アイリスオーヤマでは約4万時間までは問題ないことを検証によって確認しているようです。
ところで、このJISによっての決めている使用時間というのは、どのようにして決められたのでしょう。調べてみると、日本照明工業会のサイトに以下のような記載が見つかりました。
建築付帯設備のうち照明器具を含む電気設備の法定耐用年数は15年と決められておりますが(国税庁)、電気用品安全法では、照明器具などの電気絶縁物の寿命を40,000時間としています。また、JIS C8105-1の解説では適正交換の目安は通常使用で10年としています。一般社団法人 日本照明工業会ガイド111では、耐用年数を「適正交換時期」と「耐用の限度」に規定しており、「適正交換時期」を8~10年、「耐用の限度」を15年としています。業界としては「適正交換時期」を器具の寿命と考えています。
JLMA 日本照明工業会 リニューアルQ&A Q8 寿命と耐用年数はどうちがうのですか?
こちらには、電気用品安全法が定めている電気絶縁体の寿命として、再び4万時間の表記が出てきます。
LED照明の寿命について、まとめてみるとこうなります。
製造者であるアイリスオーヤマが設定する設計寿命は約4万時間
JIS規格の適正交換の目安は約3万時間
電気用品安全法で定められている照明器具などの電気絶縁物の寿命は4万時間
これらは、以下のように考えることも可能かと思います。
LED照明の適正交換目安は3万時間だが、電気絶縁物の寿命を迎える4万時間を設計寿命としている
日本で販売している、他のいくつかの照明メーカーのサイトも確認してみましたが、大半の製品は寿命を約4万時間としているようです。
だとすると、照明と同様にLEDバックライトについても電気絶縁体の寿命を適用できるのではないかと考えたくなります。
そこで、電気絶縁体の寿命を定めているという、電気用品安全法について確認してみました。
電気用品安全法
電気用品安全法のおける絶縁物に関する規定は、照明に限定されたものではなく、電気用品に共通して4万時間は安全に使用できることを目的としていると分かりました。
また、電気用品の設計寿命は、電気用品安全法との関係で4万時間以上にすることが難しいのだろうと推測しています。
そこで、LEDバックライトを使用する製品が電気用品安全法の対象であるかを確認していくうちに、情報機器は電気用品安全法の対象外であるという情報に行き当たります。
もしもこの情報が正しいならば、PCモニターのような製品は電気用品安全法との関係で生じる4万時間という制限を受けないこととなるはずです。
ですが、ACアダプターや電源ケーブルまで含めると、情報機器も電気用品安全法の対象となりえると判明し、設計寿命を4万時間以上にすることは難しいことには変わりがないという結論に至りました。
保証期間と設計寿命の関係
4万時間が電気用品安全法を元にした上限だとすれば、他の理由が設計寿命の下限を決定している可能性もあります。
そこで、保証期間から設計寿命を特定できないかと考えました。
テレビであれば、1日中表示し続けられることは稀でしょうが、常時監視が必要なシステムや監視映像用のモニターなら連続運転が考えられるはずです。
その結果、3万時間を保証上限としているモニター製造メーカーが複数存在していることが分かりました。
一方で、フィリップス社のPCモニターは、使用時間に関係なく5年間保証するとしており、24時間使用を5年続けた4万8400時間までは保証するということになります。
これは、電気用品安全法を理由とした上限を適用しない、製品自体の設計寿命だと言えます。
こららから、LEDバックライトを使用したディスプレイの設計寿命は、3万時間から4万8400時間であると推測しました。
LEDの寿命は、約6万時間とされているCCFLと同等だといわれていますので、CCFLを用いていたテレビよりも設計寿命が短いと想定することには違和感を感じるかも知れません。ですが、これは液晶ディスプレイの設計寿命についての想定です。
LEDの光束維持率が不足するまで低下するという意味ではなく、ディスプレイ自体に不具合発生の可能性が高まるのが、3万時間から4万8400時間であるという意味です。
想定以上の調査量が必要となったLEDバックライトの寿命ですが、そろそろ結論を出しても良さそうに思えてきました。
現時点で判明している事実を踏まえ、下記の設計寿命を当サイトの推測値とします。
LEDバックライトの設計寿命は3万時間〜4万8400時間。
LEDバックライトを使用した液晶ディスプレイの設計寿命も3万時間〜4万8400時間。
もちろん、これらを覆す設計寿命の根拠が今後判明した場合、変更する可能性はあります。